カトランは、1915年5月にパリで生まれた画家である。1945年にパリの国立高等美術工芸学校に入学、ブリアンション教室で学ぶと同時にモーリス・ブリアンションへ師事、ムルロー工房へ出入りするようになる。同時代に活躍したブラジリエやギヤマンらは学友にあたる。
1950年にフローレンス・ブリュメンタル賞を受賞し、1957年頃からパリやニューヨークなどで定期的に個展を開催。あわせて各種グループ展にも出品するようになり、1965年には「ムルロー工房の版画」のカタログにピカソやシャガール、ミロらと共に採録される。
日本では1967年に東京の吉井画廊で初の個展が開催され、1983年に俳句に絵をつけた版画集「俳諧十選」が好評を博し翌年には小品展が開かれるほどであった。また、1972年にもモンテカルロのアンドレ・ソーレ社刊「犬と狼の間」(ジルベール・セスブロン)にも挿絵9点のリトグラフを製作している。
鮮やかな色彩による大胆な構図と明暗のコントラスト、それでいて微妙な色調による柔らかな印象が特徴であり、人物、風景、静物などを描いたが中でも大輪の花々をモチーフとした作品が多い。しっかりと塗り込まれていても重厚さを感じさせず、静けさと叙情性をたたえた作風は、フランス的感性のみならず日本を含む世界各国を旅して見聞した全てから得たインスピレーションの賜物と言える。
1995年にレジオン・ドヌール勲章を受章、2004年にパリにて死去。84歳であった。