日本を代表する日本画家。1920年(大正9)生まれ。新潟県出身。
上京して1940年(昭和15)年 の第12回青龍展に初入選、その後召集を受けて戦後はシベリアで抑留生活を おくった。帰国して青龍展に復帰、「炎炎桜島」、「塔」など黒い色を 基調に豪放な筆致と大胆な構図による、現代感覚あふれる新鮮でダイナミック な作品を次々と発表した。そして、昭和37(1962)年、青龍社脱退後は 富士を描いた連作で評判をとる一方、「瀟湘(しょうしょう)八景」、 「越路(こしじ)十景」など力強い表現のうちに繊細さを感じさせる水墨画、 叙情性豊かな武蔵野の風景などに新しい境地を開いた。
彼の作品にはほとばしる激情と、深い寂寥感(せきりょうかん)が混在 している。初期の現実の社会に題材をとり、激しい筆使いをみせる作品の うちにさえ見え隠れする沈黙の世界、晩年の静寂さに満ちた作品に埋もれた 生の渇きにも似た情熱の火は、両者の間で揺れ動く画家の複雑な内面を写し ている。それは抑留生活で極限状態に置かれた人間が抱くであろう 生そのものへの深い思いとどこかで繋がっているようにもみえるが、戦後 の混乱のなかで必死に自己の存在を確かめようと闘い続けた強い意志の力は、 時代を超えて今日なお私たちの心を打つものがある。
上記以外の代表作品に「グランドキャニオン」「富士雷鳴」「カザフスタンの女」などがある。
1973年(昭和48)、53歳で死去。