ジャン・ジャンセンはアルメニア人の画家であり、1920年に小アジアのソールーズで生まれたが戦禍を逃れるため幼少期をギリシャで過ごす。11歳の時に一家でパリへ渡った頃から画家を志し、モンパルナスやパリ装飾美術学校にて絵画を学ぶ。
1938年にパリ装飾美術学校を卒業、デザインや漫画などの仕事をしながら描いた作品を翌年のサロン・デ・アンデパルダントに出展し好評を博す。その後もサロン・ドートンヌ、エコール・ド・パリ、サロン・デ・チュイルリー、「時代の証人画家」展へ出品、フランスにて活躍するようになる。
作風において特筆すべきは高度で緻密なデッサン力であり、そこには余分な肉付けなど一切存在しない。モチーフはギリシャの漁師や子供達、イタリアの市場や宗教行列、ベニス運河、裸婦、バレリーナなど多岐に渡り移り変わっていったが、いずれにおいても一貫して人間の内面にある悲しみや苦しみを訴えかける。それはアルメニア人であるが故の苦難や戦争の悲惨さを実体験し、想像したものでなく自ら目にしたもののみを描くという姿勢ゆえのものであろう。
2002年にアルメニア大虐殺のシリーズを描いた展覧会を開き、これによって画家としての功績が名実ともに認められフランスのレジオン・ドヌール勲章と故国であるアルメニアの国家勲章を受賞する。日本では1993年に世界で初めてのジャンセン専門美術館となる安曇野ジャンセン美術館が長野県安曇野市に開館。2013年8月27日、フランスにて逝去。93歳であった。