中畑艸人は、1912年(明治45年)7月11日に和歌山県海草郡で生まれた洋画家である。本名は幸夫(ゆお)。
初期は独学で水彩画を描き、日本水彩画会展や太平洋水彩画会展に出品し1933年(昭和8年)の第14回帝展で初入選を果たした後幾度か入選を重ねるが、1938年(昭和13年)に上京し洋画家である硲伊之助(はざま いのすけ)に師事、油彩を始める。
風景画を描いていく中で動感溢れたものを好むようになり、「馬・海・帆船・壮大な空、それにバレリーナ……。およそ生ぬるいものが性にあわない私は、遂にこれら動感にみちたモティーフに魅入られてしまった。とりわけ馬に至っては、何度描いても描いても尽きることなく形を変えて、私の筆を動かさせるのです」と本人が語るように、とりわけ馬に強く魅せられ国内外の馬産地を数多く取材し連作した。力強い躍動感を持つ雄大な駿馬を描いた作品群は高く評価され、1955年(昭和30年)には「発走迫る」で第11回日展特賞を受賞、1969年(昭和44年)と1979年(昭和54年)にはイギリスのホースアーティスト・オブ・ザ・ワールドに招待出品した。1988年(昭和63年)からは日本中央競馬会馬事文化賞選考委員も務めた。また競走馬だけでなく、馬を描く事で阪神大震災を題材とした「惨!! ’95 1月17日」や、中近東で今も続く戦争や湾岸戦争などを暗喩した文学性の高い作品も制作した。
1999年(平成11年)9月27日、肺炎のため死去。87歳であった。