松村公嗣は1948年(昭和23年)1月26日に奈良県桜井市で生まれた日本画家である。
片岡球子に師事し、愛知県立芸術大学美術学部絵画専攻(日本画)を卒業し同大学大学院へ進学。同年、再興第57回院展にて「漁婦」が初入選を果たし、春の院展も初入選した。大学院修了後、1975年(昭和50年)に「津軽」で山種美術館賞展人気賞を受賞すると、インド・ネパールへの取材旅行を皮切りにアジア・インドネシア・ヨーロッパ各地へ取材旅行をしながら制作活動を行い、院展及び春の院展にてそれぞれ計7回奨励賞を受賞している。
国内外での取材先で見た風景の美しさ、季節の移ろい、厳粛な神事などを精密な筆致と優美な色使いで描き出し、高い写実性を持ちながらも幻想的な世界観を醸し出す独自の画法は繊細でありながら息を飲むほどに力強く観る者の心に迫る力強さがある。制作活動においても、出身地である奈良県の春日大社への絵巻奉納や名古屋御園座の緞帳原画、絵本「すみ鬼逃げた(文・岩城範枝)」の挿絵、「文藝春秋」の表紙絵を手掛けるなど多岐に渡っている。
春の院展にて春季展賞(作品名「蓮」・「午后」)、外務大臣賞(作品名「どんど」)を受賞、日本美術院賞・大観賞(作品名「なおい」)など受賞歴は枚挙に暇がないほどであり、その実力を認められ1998年(平成10年)に日本美術院同人推挙、現在は評議員も務めている。また出身大学である愛知県立芸術大学にて助手から教授を経て2013年(平成25年)には同大学学長に就任するなど後進の育成にも尽力しており、現代日本画界の発展に大きく貢献している画家の一人である。