ベルナール・ビュッフェ(Bernard Buffet)は1928年7月10日にパリで生まれた画家である。弱冠19歳でパリの最も権威のある新人賞・批評家賞を受賞し、フランス美術界における具象画の寵児としてもてはやされた。
若くして名声を得た華々しい経歴とは裏腹に、父との確執や母との死別を経験し、第二次世界大戦中の占領下で絵を学んだ事から、戦争の悲惨さやその時代の悲哀や虚無感を内に抱えていた。それは彼の画風にも如実に反映され、硬質で直線的な黒の輪郭は折れてしまいそうなほどに細い人物や対照的に荒々しい静物などを描き出し、ほぼモノトーンに近い限られた色彩によって悲壮感や不安感を見る側に強く主張する。そのため、終戦直後の荒廃した空気をまさしく表現する画家として「時代の証人画家」と名付けられ脚光を浴びた。
日本ではスルガ銀行3代頭取である岡野喜一郎氏が彼の作品に深く感銘を受け、自ら蒐集した作品を寄贈し1973年(昭和48年)11月25日に2000点の作品を収蔵する「ベルナール・ビュフェ美術館」が開館した。ビュッフェ自身も7回にわたって来館している。
晩年はパーキンソン病を患い絵を描く事もままならなくなった為、絶望のうちに1999年10月4日、自ら命を絶つ。71歳であった。